まったり創作しております。メインはオリジナル小説。そろそろ版権にも手を出したい。

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黄昏マリオネット20
三丁目― 
帝雲町でもっとも華やかな繁華街があり昼間はオフィス街としてそれなりに人々が往来を行き交うが、夕方頃になるとささやかなネオンライトが灯り始め街に色を染めていく。町内の他の地区には無い独特な雰囲気を漂わせており、夜のみ町内で唯一治安が余り良いとは言い切れない地区と化す。

そんな三丁目の端にバーを構えるマスター。その後ろの3人の男らは振り向かないマスターの背中に淡々と話し掛ける。

「先日、旦那様が病に伏せられました。今にも峠を迎えそうな状況です。旦那様はお世継ぎを若君にとおっしゃっておりました・・・この様なふしだらな生活はお辞めになって里へお帰りください。」
「ふん・・・。」

何が『今にも峠を越えそう』だ・・・前にも『旦那様が大怪我を召されました』と言われたので弱まった顔でも見に行こうとしたら真っ赤な嘘で、自分を跡継ぎにしてさっさと隠居したいが為に家(里)の人間総動員で自分を取っ捕まえて監禁しようしたじゃないか。と、バー『トゥ・ライト』のマスターもとい、帝雲町御三家のひとつ『冬岩寺(とうがんじ)』のひとり息子冬岩寺雪光(ゆきみつ)はそんな苛立ちを隠し切れない表情で周囲を観察する。出て来たのは2人だが、往来を行き交う通行人や建物の影にざっと2、30人は刺客が紛れている事を察する。マスターは人通りの多い街中というのを除いてもこの人数で自分をどうこうしようだなんて舐められている。と考えながら乱暴に莨をくわえて火を着ける。

「『私を迎えに来たいなら自分から来い』と伝えなさい。そんな腑抜けのいる家に帰りたい『息子』なんていないわよ。」
「ならば、旦那様より『生きて帰って来れば何でも良い』と承っておりますのでその様に。」
「・・・ここ往来よ?」

吸い切った莨をアスファルトに指で弾き落としパンプスのピンヒールで踏みにじる。こんな一般人が行き交う大通りでドンパチやろうというのか?とマスターは訝しげな表情で周囲に緊張を張り巡らす。すると通行人の中に大きなコートで左手を隠す男がこちらへ向かって来る。極めて巧みに気配を消しているがマスターにはお見通しだった。男はマスターの近くまで来るとコートの影から太いドス刀を逆手で出しマスターへ素早く切り出す。それと同時に後ろの3人の男らもそれぞれ刃物の切っ先をマスターへ向けて来たのだ。一般人どもは夜の闇に気配を溶かした彼らに全く気付きも気に留めすらもしない。しかも時間にしてほぼほぼ刹那の出来事である。

「・・・?」
「っ!!大胆な事するわね!」

しかし男どもの繰り出した刃物は空を切り互いの刃物をかち合わせる音を出す。ネオンライトの光を淡く反射して無機質な刃に意図せぬ色彩が染まる。マスターは男らの先制攻撃の瞬間、全力で上空にジャンプし跳ね上がったのだ。ビルの2~3階程まで飛び上がる脚力は人間には極めて難しいはず。しかしマスターは蘭の様な妖怪という訳でも水神の様な神属という訳ではない。人間である。特殊な訓練を積んでいるというだけだ。しかしそれはマスターだけではなくマスターを訪ねて来たこの男どもも同じである様だ。マスターはそのままの勢いで並び合うビル群の壁をピンヒールのパンプスで蹴り上げながらひとつのビルの屋上へ昇る。その動きは素早過ぎて一般人には目視する事すら叶わない。愛用の細身の莨を加えマッチで火を着けると思い切り肺腑へ煙を呑み入れて味わい、地上を見下しながら同じ様な勢いで思い切り吐き出した。

「ばっ、馬鹿じゃないの!?節操無くなって来たわねあのジジイ・・・!!」
「!!!・・・若君がここにいたぞー!」
「チッ、仕方ないわ!」

マスターの所在に気付いた6、7人の追っ手どもがマスターのいるビルの屋上まで飛び上がって来た。すぐさま一斉に凶器を振りかぶり襲い掛かって来たのでマスターはそれを機敏に避ける。避けたついでに一人一人丁寧にしっかり首の背に手刀を入れたり鳩尾に拳を入れる等をして深く気絶させて行く。昼前には目が覚めるだろうが日が出ている内は彼等は何も出来ないだろうと踏んでの対処だ。ビルの端まで行くと一気に飛び降り地上まで急降下する。

「あら、今回は結構寄越して来たのね!」

着地点の路地裏にも控えていた追っ手の仲間がたんまり待ち構えていた。マスターは宙返りをしながらバランスを安定させ、着地ついでに地面に手を付き辺りの追っ手どもを大きく脚蹴りにして薙ぎ払う。一通り蹴散らしたら逆立ち状態から体制を立て直し路地の深くまで走って逃げて行く。と、言うよりは四方八方に追っ手がわんさか待ち構えているので逃げ場を作って進んで行く。追っ手に一発拳や手刀を入れて気絶させつつ一旦大通りまで出ようと猛進して行く。だがマスターが追っ手を勢い良くかわした時、その先には人影が2つ視界の端に揺らめいておりこのままだとマスターに避けられてしまった追っ手の攻撃の流れ弾に直撃してしまう。

「っ!危ないどいて!!」

マスターが慌てて声を掛け大通りにいた2人の男がそれに気付く。片方の男が状況に勘付き路地から出て来た怪しい追っ手を3、4人咄嗟に殴り飛ばした。余りにも華麗なストレートを丁寧に顔面に決めて行くのでマスターは片眉を上げ疑問の表情で大通りにいる男たちの顔を確認した。

「嗚呼、別れてすぐだが・・・また会えて嬉しいよシニョリータ(お嬢さん)。」
「あら、貴方たち・・・!」

追っ手を殴り飛ばした男は、先程まで店で杯を交わし酒を呑んでいたウォルナットだった。一緒に帰路に付いた銅もいる。マスターはいつの間にかウォルナットたちが帰宅している方向に逃避行を続けていたのだった。
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