FC2ブログ
まったり創作しております。メインはオリジナル小説。そろそろ版権にも手を出したい。

スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

黄昏マリオネット16
その後、『おめめあります』で事の顛末と水神はもう大丈夫である事をやんわり八ツ梅に説明し少し休息を取らせて貰い、日が昇ってから銅一行は下山を始めた。麓の村では山頂で起きた事を誰一人知る事もなく、平々凡々とした時間が流れていた。柿太朗は渇く事が苦手なので帰りも八ツ梅に水筒へ煎れて貰ったアイスコーヒーを大事そうに飲みながら村の中でも活気のある往来を歩いていた。

「あーあ、暑い。これは飲まないとやってらんないっスね!咲希の姉さんもコーヒー飲みます?」
「い、いいえ。私は結構ですわ・・・柿太朗殿の大切なお飲み物ですもの。」
「そうっスか?ありがとうございます!」

柿太朗はこの炎天下を歩く咲希を気遣い、一緒にコーヒーを飲むか進めたが、やんわりと断られた為一人でコーヒーを口に含み、嚥下する。ふと、村を道行く柿太朗は一件の家に目を留めた。

「・・・あれ、この家は兎を飼っているんスね?しかもこんなに沢山。」
「ああ・・・そうだな。」

その家は庭に大きな飼育場を設け沢山の兎を飼っていたのだ。ペットにしては正直売る程あると言っても過言では無い様な余りにも多すぎる兎の数に柿太朗は思わず気になってしまった。黄色や白いふわふわの毛並みの兎が自由に飼育場のスペースの中を飛び跳ねている。

「そういえば柿太朗殿、この兎は中々特殊な種類なのですが、種類の名前を何と申しますかご存知かしら?」
「ん?いや、初めて見る種類っスがなんと言うんスか?」
「・・・。」
「?」

咲希や銅が返答に困った素振りを見せたので、柿太朗はどういう事なのかわからなくなってしまい何度も聞き返してしまった。やっと口を開けた咲希は少し気まずい表情で柿太朗に説明をし始めた。

「・・・この兎はその毛並みの色と体の独特な香りから別名『タンポポ』と言って、眼球からコーヒーに近い味の飲み物が作れるそうですわよ。」
「へぇ・・・ん?『タンポポ』!?」

柿太朗はこの言葉に聞き覚えがあった。ついきの先程までいた山の中にあるカフェ『おめめあります』で店主の八ツ梅の淹れるコーヒーは、『タンポポ』から作られていた。柿太朗は嫌な予感を込めて手に持った水筒を見つめてしまった。

「『タンポポ』で煮出した『タンポポコーヒー』ってまさか・・・!」

タンポポはタンポポでも、植物の『蒲公英(たんぽぽ)』ではなく、『タンポポ』と言う種類の兎の眼球から煮出してある事を確信に変えて柿太朗は驚愕した。銅と咲希の兄妹は呆れた表情をしておのおのため息をついた。

「うげぇー!知っていたなら早く言ってくださいっスよう!!『他人から渡された物を口にするのは控えろ』ってそう言う事っスか・・・!」
「『知っていて飲んでいた』と言う微かな可能性に賭けていたが、案の定そんな事は思い浮かぶだけ無駄だったな。」
「私は少しナンセンスな飲み物だと思いましてよ・・・良く飲みましたわね。」

涙目でこの禍々しい飲み物に対する2人の反応を走馬灯の様に思い浮かべていた。植物と眼球ではそもそも香りも変わるかと思いきや、すっかり油断していた様で得意の鼻も完全に疑いを持たなかった訳である。全く以て残念な男だ。

柿太朗は登山から帰路に至るまで散々な目に合った休暇となってしまった。大きな入道雲が悠々自適青空を漂っており、村には蜩の大合唱が聴こえ初めて来た。
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

 管理者にだけ表示を許可する

Copyright © 私の彼はクレピュスキュール(改). all rights reserved.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。