まったり創作しております。メインはオリジナル小説。そろそろ版権にも手を出したい。

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黄昏マリオネット15
白い女は吹き荒れる吹雪にさらわれて山道のより木々が深い場所に降ろされた。地に座り込んだまま血の赤で服を染める脇腹の傷を手で抑えていると木陰から現れた白蛇が白い女に話掛けて来た。

「大丈夫だった?脇腹・・・痛いの?」
「助けてくれたのね、ありがとう・・・綿彦(わたひこ)。」

白蛇は白い女に近付きながら白髪の少年へと姿を変えていた。綿彦と呼ばれた少年は白い女の元でしゃがんで手を翳し、女の傷口を凍らせて止血をし始めた。

「っ・・・!」
「動かないで世七子(よなこ)。あと少しだから・・・。」
「ええ、死んでから暫く経つけれど・・・痛みは生前同様多少は感じちゃうのよ・・・。」
「こればかりは困っちゃうよね・・・はい、終わり。最低限の冷凍で済ませてるから、本当に止血だけだよ。後は自分の霊力でどうにかしてね。」

白い女、もとい朧世七子(おぼろよなこ)は止血に対して綿彦に礼をするとゆっくり立ち上がった。綿彦は剃刀色の瞳を光無く細め、世七子の傷口がきちんと塞がったか確認した。最低限の冷凍に留めたのは傷痕を残さない為の配慮なのだが、正直世七子は怨霊なので全く以て関係無く、気持ちの問題である。それでも世七子は嬉しく感じ不器用な少年に微笑みを溢す。

「ごめんなさいね、少し失敗しちゃった。」
「大丈夫。兄さんもそこまで気にしてないみたい。」
「そうかしら・・・だと良いのだけれど。」
「・・・世七子にしてはしおらしいじゃねぇか。」
「!」

少し離れた樹木の枝に一人の男が座っていた。綿彦とは対称的な真っ黒いワンレンで前下がり気味のうねり髪。剃刀色の瞳をぎらつかせて綿彦と世七子を睨み付ける真っ黒いスーツ姿。黒い莨を吸う口元には鋭い獣の様な尖った歯が並んでいる。

「蛇王(だおう)・・・いたのね。」
「まぁな。お前は俺の数少ねぇ理解者だ。失うには惜しすぎる。葬式みてえな顔してねぇでさっさといつものドライなお前に戻んな。お前の葬式はとっくに終わってんだよ。」
「あら、ありがとう。」
「兄さん、間に合ったんだね。」
「嗚呼、次の準備は出来ているから早く帰んぞ。」

蛇王の言葉に頷くと綿彦とそれに続いて世七子は妖術で姿を眩ます。俗にいう瞬間移動だ。1人残った蛇王は丁度吸い終わった莨を木の幹に擦り付けて火を消していた。残った吸殻は手から勢い良く出した炎で燃やし消していく。

「待ってろよ、『スカーレット』。」

鋭い牙を露に彫りの深いその顔は意志を固めた笑みを浮かべていた。蛇王も姿を眩ませた夕方の山中はただ静かに風が吹くばかりとなり、どこからか遠くの方で蜩の鳴き声が聴こえて来た。
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