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黄昏マリオネット12

沈む様に地に伏せて意識を失う水神の姿を見つけ銅と咲希はすぐにその元へと駆け寄った。水底の様に深い群青の髪は水を多く含み雫が涙の様に頬を伝って流れる。変形的な袴姿の様な着物は少年に近い体つきの水神の姿をより一層際儚げに魅せている。良く見ると髪だけではなく、全身くまなく濡れており、まるで池そのものになってしまったかの様だ。銅は自分自身が水を受けて濡れてしまうのもお構いなしに少年の華奢な身体をそっと抱き起して様子を伺った。

「大丈夫か」
「・・・。」

薄らと意識を覚ます水神は深い深い群青の瞳を虚ろに開けて銅の顔をじっと見つめていた。暫くすると意識もはっきりしてきた様で、自分で立ち上がり大丈夫である事を伝える。咲希と銅は水神にここに至るまでの経緯や水神の友人の八ツ梅の店で話した事等を説明した。

「その水晶玉は確かに私の物だが、その様な術に覚えは全くない。アンズメコマドリも育ててはいるが、今は瞳を取り出せる程育ってはおらぬ。」
「そうですの・・・嗚呼、八ツ梅さんが心配していましてよ?」
「・・・申し訳ないが、今日は帰ってくれなんだ。先程の呪術とやらのせいで体調が優れぬ。」

水神は眉間に皺を寄せ心身の苦痛と二人に対する申し訳ない心情を伝える。肉体の見た目は少年そのものでも、話し方や物腰の落ち着きから長い年月を生きる神という存在である事に気付かされる。銅と咲希は顔を見合わせて「今日は引き下がろう」と互いにアイコンタクトをした。

「それは大変失礼した、また明日伺わせて貰おう。」
「嗚呼・・・すまぬな。」
「ゆっくり、お休みになってくださいませね。」

銅と咲希の兄妹は水神の岩屋を後にして下山道まで戻り、とりあえず八ツ梅の怪しい店『おめめあります』まで山を下る事にした。しかし、少し歩いてから二人は何かを忘れている事に他愛もない会話の中から気付いてしまった。

「・・・そういえば兄上、柿太朗殿はどちらへ行ってしまったのかしら。」
「嗚呼、そういえばいないな。」

あれだけ存在感のある橙色の髪をした見た目も若干やかましい男が一人いないだけでとても場が静かになる。それだけ柿太朗は無駄に明るい男であり、真夏の太陽の様にじとじとと照り付ける明るさがあるのだ。兄妹は多少の面倒臭さもあったがあの何かと手の掛かる柿太朗を探しながら下山する事にした。



場所は変わり、山の中腹あたり。
木々が生い茂り山頂からも『おめめあります』からもそれなりに離れてしまった様だ。先程から話題の何かとやかましく残念な男柿太朗はあるものを追い掛けてこのあたりまで辿り着いてしまった。そのあるものとは、目の前の草陰に隠れた人影。先程山頂の木々に隠れて逃げようとしていたのを見つけたのだ。それはもう、今まさに草を揺らして姿を現す所だった。柿太朗は相変わらず飄々とした何も考えて無さそうなニヒルな笑みを浮かべてはいるが、視線だけは隙無く草陰に向けている。

「・・・。」
「あれ・・・?」

しかし、柿太朗の目の前に現れた人物は敵かと思いきや艷やかな長髪、しなやかな細身の体型、鋭い視線で柿太朗を見詰めた瞳は良く知ったものだった。

「銅先輩・・・?」
「全く、急にどこ行っていたんだ?心配して探してしまったじゃないか。一旦山を下るぞ柿太朗。」
「んー?それはちょっと難しいっスね。」

手招きをして柿太朗を下山に誘う銅。しかし、柿太朗は何故か動かずにへらへらと笑っているだけだった。不審に思った様で銅は柿太朗へ近寄り腕を掴もうとした。

「本当にどうしたんだ?いい加減にし・・・っ!!」

捕まり掛けた手を素早く引いて避け、相手の腕を掴み返す柿太朗。そのままの勢いで掴んだ腕を引っ張り相手の顔面に掌底突きを喰らわした。野太くバチン!と音が鳴り、唐突に相手の顔面を痛みで真っ赤に染め上げてしまった。

「何故・・・っ!?」
「あのね、先輩に化けてるのバレバレなんスよ。まず先輩は俺をわざわざ探したりはしない。はぐれたら置いて行くし、心配もしない。まぁ、俺は必ず先輩の元へ帰るし先輩もそれを必ず信じてくださってるから必要無いんスけどね。」 
「・・・!!!」
「あと爪が先輩の本日も素敵なお爪より3ミリも長いとかあるけど、兎に角先輩は全体的にもっと美しいので本来の姿に戻って貰えますかね。失礼な上に不愉快極まり無いっスよ。」
「・・・あら、もうバレちゃっているのね。仕方ないわ。」

勘念したようで銅の姿だった人物は悔しそうな表情で術を解いて元の姿へと戻った。
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