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まったり創作しております。メインはオリジナル小説。そろそろ版権にも手を出したい。

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小話『大きなお友達』
創作に関してピクシブやこのブログ等のオンラインでの活動を主にする為、
過去にコピー本掲載用に書いていた未発表の作品等や、実際にコピー本に
掲載していた作品も手直しし、ウェブ上で掲載する事にしました。少しずつで
はありますが掲載していきます。
いつも通りこちらで先行して掲載した後、ピクシブへも投稿する予定です。

今回は未発表の小話『大きなお友達』です。
放課後、昼下がり。
帰宅部の少女はそわそわと手早く支度をすませて足早に裏の校門口へとかけ出る。すると、その前には見るからにお高そうな黒塗りの車が一台。薄く開くドアからぬっ、と出ている長く骨ばった指がゆっくりとそれを開ける。車の黒から出てきたのは背がとても高く細見なスーツ姿の男だ。少女はその男の姿を確認すると、けだるげに車へと乗りこんだ。



小話『大きなお友達』



黒塗りの車でやってきたのは、よくあるハンバーガーのファーストフード店『モクドダック』だ。駐車場に止まる黒塗りの高級車と周りの一般車の何とも言えない違和感も気にせず二人は店内へと入る。スーツの男がヘビースモーカーなので喫煙席を選び座った。惜し気もなく真っ黒なパッケージの莨(たばこ)を唇で軽く咥えると、その姿を見ていた少女がめんどくさそうにテーブルに頬杖をついた。

「レイジ」
「ん、どうしたの、こみねちゃん。」
「その真っ黒趣味やめた方がいいんじゃないの。なんか富士の樹海って感じできしょい」

セーラー服にサイドテールの黒髪を揺らし少女、茶川(ちゃかわ)こみねは自分より明らかに年上の男、巻原 礼二(まきはら れいじ)に女子高生らしい冷たいテンションで禁煙を促す。というよりかは車も莨も、きっちりとは一応しているが、長めの髪も、仕事用のメガネも、おしゃれにラインは入っているがビジネススーツまで。彼の身に着ける全てが真っ黒なのを彼女は一緒に歩く身として恥ずかしいのやもしれないが。礼二は嫌味そうに莨の煙を肺腑に吸い込んで余裕で笑いながらゆっくりと煙を吐き出した。

「何、こみねちゃん。心配してくれてるの?やさしいね。」
「はぁ、馬鹿じゃないの。そんなの吸ってないで、早くハンバーガー買って来てよ。」

だるそうな目つきで礼二を睨むとこみねはおなかをさすって空腹を訴えた。男はすみやかに莨を灰皿で潰すと、財布も持たずに立ち上がる。何を食べるのかこみねから聞くと、ゆるゆると手をふる少女に見送られながらひとりレジへと歩き出した。レジではきっちりならんで順番を待つ。周りの女性客が長身で顔立ちも整っていて、周りとは一味違ったオーラを放つ礼二にそわそわとしだす。やっと礼二の順番が来るとレジの女性店員もふいに近くに来た甘いマスクを目の前にして思わず声がのけぞってしまう。

「い、いらっしゃいませぇ・・・本日はこちらでお召し上がりになりますか?」
「ああ、席はもう取ってあるから大丈夫だよ。とりあえずデラモックバーガー4つ。あ、4つともセットで。飲み物は全部コーラで・・・うーん、やっぱり2つはホットのコーヒーにしてくれるかい?ポテトは全部LLLLサイズでお願いね。あと、アップルパイ2つと・・・嗚呼、フィッシュアンドチップスも・・・。とりあえずこれで大丈夫かな。」

スレンダーな体系からは食べきれるのかという程の量の注文が次から次へと口から出てくる出てくる。店員の女性もあっけにとられながら注文をキッチンに送る。お会計になり店員の女性が当店はキャッシュカードはご利用になれません、と念のためさりげな伝えると、男性は余裕そうにカードケースを胸ポケットから出すと、一枚取り出し

「あ、ニャオンで。」

とチャージするタイプのカードを差し出したもちろん、これはモックでも対応している。意外に男は庶民的だ。

嬉しそうに上に山ほど積まれたトレーを3つも器用に持って、礼二はこみねの待つテーブルの自分の席へと落ち着く。こみねは学校にいた時に購買で買ったあんぱんを食べ終わった所だった。やっと来た礼二に遅い、とつぶやきながらあんぱんの袋をコンパクトに結び始めた。

「いつも通りデラモックにしたけど、3セットで足りる?」
「んー、フィッシュアンドチップスもあるし晩御飯まで我慢するー。晩御飯はどこに行く予定?」
「ここ1週間ファーストフード続きだったから流石に今日はビルの上の方のレストラン連れて行くよ。中華で良いかい?」

いかなることか、2セットずつでも多い量なのにそのほとんどを食べるのは明らかに礼二より小柄なこみねの方だった様だ。礼二はそれに慣れている様で何事もなく晩御飯の提案をする。こみねは眉間にしわを寄せると不機嫌そうにデラモックバーガーを小さい口で咀嚼しはじめた。

「・・・しゃぶしゃぶがいい。」
「了解。じゃあ六本木かなー」

コーヒーをひとつ手にとってブラックのまま口に含みながら礼二はこみねの提案ににっこりと微笑んで了承した。他愛もない談笑をくり広げていると、遠巻きからこみねを呼ぶ声が聞こえた。こみねが気だるげに顔を向けると、同級生で幼馴染の少年、松崎がこちらに手を振って近付いていた。

「おー、マツザァ部活終わりー?」
「まぁね。って、」

席の近くまで来た松崎はこみねと一緒にいた人物を見てぎょっとした。とにかく全身真っ黒。黒以外の色と言えば、ワイシャツの白と左薬指にはめたシンプルな結婚指輪の銀だけの様だ。しかも、身につけている物が庶民の彼から見てもおブランド物だとわかる。人はよさそうだがその整った甘いマスクから、松崎少年はかろうじて彼が自分とは住んでいる世界が違う事を感じ取る。しかしながら何故、自分と同じド庶民のこみねがこんな高嶺、と言うよりかは高値の花の様な男と行動を共にしているのか。そこからやっと、テーブルの上の溢れるばかりの食べ物に驚く松崎。そんな驚き過ぎてキャパシティを超えてしまっているリアクションの幼馴染を半ば無視して3つ目のデラモックに手をつけようとするこみねに、礼二は微笑みながら松崎の紹介を求めた。

「こみねちゃん・・・彼は?」
「あー、あれは、マツザキ。『マツザァ』はあだ名・・・たまにデザート食べ放題連れてってくれるー。」

いつのまにか3つめのどでかいハンバーガーをもぺろりと平らげ、ポテトを食べながら幼馴染について紹介するこみねに礼二はじゃあ悪い子ではなさそうだ、と松崎に会釈を軽やかにすると松崎ももごもごと頭を下げる。

「こんにちは、僕は巻原。よろしく。」
「おお、ちゃーす・・・。」
「・・・おや、いけない。莨が切れてしまったなあ・・・こみねちゃん、買ってくるから待っててね。」
「んー3分以内にねぇ。」

こみねの無茶ぶりにさわやかに了解と短くつぶやきながら、礼二はスマートに大股で歩いて席を立った。あんな大人のお兄さんを顎でつかう幼馴染・・・苦い物を噛んだような顔で松崎少年はこみねに聞いてみる事にした。

「な、なあ、あの兄さんとどういう関係なんだよ・・・あの人、結婚してるみたいじゃないか。」
「えー、あー、あれねぇ・・・大したモノじゃないんだよねぇ。」
「はぁ?良く意味がわかんないんですけど!・・・」
「こみねちゃんただいま!」

二人ははてと顔を上げるとそこには真っ黒いパッケージの莨を2カートン抱えた礼二の姿が。髪の毛1本乱れる事のない余裕したたるさわやかな笑顔で、席に座るこみねと隣に立つ松崎少年の間に割り入る。こみねが丁度フィッシュアンドチップスの鱈のフライを口にほおりこんだ所を見て礼二はこみねの手を取った。

「ちょっと、まだアップルパイ残ってるんだけど・・・」
「そんなの、僕の車で食べれば良いじゃないか。では失礼するよマルサキ君。」

終始柔らかくにっこり笑いながらこみねを連れてさりげなくゴミを捨てつつフェードアウトしていく礼二。二人が去って少年は唖然に取られて、思わず客が誰もいなくなった店内で呟いてしまった。

「俺、松崎なのに・・・。」

松崎少年はさみしげな背中を漂わせてひとり、自分の食べ物を注文しにレジへと向かった・・・。



黒塗りの車へと戻った礼二はこみねを後ろの広い座席スペースに座るよう案内してから自分も運転席に座る。エンジンを掛けてハンドブレーキをおろしているとアップルパイの包みを開けたこみねが不機嫌そうにしているのをルームミラーから見えて申し訳なさそうに笑った。

「ごめん、ごめんって。びっくりしたよね。」
「・・・別に、アップルパイレイジの分もくれたから、いい。でも、」

駐車場を出て少し車を走らせる。礼二はほっとすると同時にひっかかる言葉を思い出し、困ったそぶりを見せてルームミラーに映る相手に向かい、言葉をそのまま返す。

「でも?」
「レイジ、なんであんな光の速さで莨買って来たの?いつもトロくて3分丁度に帰って来るのに、今日は1分も無かった気がする。」

視線はハンドル、前方、左右に、しかし意識はルームミラーに映る少女へ。信号待ちの車。男は口角を上げると黒い莨を一本、取り出して口にくわえ、火を灯した。

「なぁに、簡単な事だよ。」
「どういうこと?」
「僕がこみねちゃんの友達だからさ。」

信号が青になると男はウィンカーを右に出し少し前進して、前の車が曲がるのを待つ。こみねは訳がわからないと言った表情を浮かべ2個目のアップルパイへと手を伸ばす。

「んー、ちょっと違くない?」
「あの男の子よりも僕の方がとても仲の良い友達と言ったら?」

少女はむむう、とゆるく考え、アップルパイを食べる手を思わず止めた。男は右にハンドルを切った。

「今日はホテルのスイートを取ったから、泊って行くだろう?」
「え、うん。」
「そういう事だよ。」

その時、運転していて少女から背を向けていた男はどういう表情をしていたのだろう。なんとなく、と昔こみねから貰った指輪を嬉しすぎて左薬指に着けている礼二はアクセルを踏んで車の速度を上げた。彼の助手席には沢山の家庭用テレビゲームを積んで。





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