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黄昏マリオネット
黄昏マリオネット3



一丁目―――――
白桜(はくおう)並木通りで今日も花見客で
盛り上がっている。白桜で作った桜酒で有名。

夢に出てきそうな程の沢山で美しい桜であふ
れ返る1丁目。図書館のある町の中心6丁目
は紅葉色づき寒さも感じる風景が見えたのだ
が、この帝雲町(ていうんちょう)に季節は
さほど重要視される事柄ではないらしい。
銅(あかがね)、咲希(さき)の兄妹に同居
人の柿太朗(かきたろう)も合流し、3人は
1丁目の中でも最も桜が美しいとされる並木
通りの中央にあるメインの大きな広場へと向
かっていた。この町の観光スポットである。
柿太朗の明るく発する言葉に、咲希は上品に
微笑み、優しくしかし少女らしくほがらかに
返す。

「咲希の姉(あね)さん!今回のお仕事はど
ういった内容なんっスか!」
「ええ、今回は猫又(ねこまた)でしてよ。
最も、飼い主は普通の人間。猫又になるまで
育てたとは気付いてらっしゃらないようです
わ。」
「ネコマタ・・・先輩、それってどういうの
なんスか?俺、ジャパニーズモンスターには
あまり詳しくなくて・・」
「ふん、全く。その町に入る前にしっかり調
べておけといつも言っているだろう。困った
奴だな。猫又というのは・・」

――――猫又。
それは普通の猫が寿命の枠を越えて百年行き
た時、天からここまで育ててくれた人々に感
謝するようにと猫又になる事を許されるので
ある。揺らめく双尾がその証拠である。しか
し、変だ。猫又は人には害のないどころか、
育ててくれた恩を返す良い妖怪なのだが、聞
いた話によると一丁目にいる猫又はどうも不
浄な気で桜の蕾を開花させない様にしている
らしい。もちろん、普通の人間である飼い主
には別の要件として伺う事になってはいるが。

なぜ、3人がこの様な会話をしているかと言
うと、彼らが副業で怪奇専門の何でも屋をし
ているからだ。めったに依頼は来ないので趣
味と化しつつあるが、3人とも怪奇の依頼を
解決する事の出来る”力”を持っている、と
いう事になる。何故、彼らがこの趣味、もと
い副業を開いたか、は深い事情があるらしい
のだが、今は知るべきではない。 さわやか
な陽気に吹き抜ける木々を揺らす風に目をか
すめながら、銅は咲希に言葉を問いかけるの
だった。

「・・・・そろそろ、着く頃か、咲希。」
「はい兄上。依頼主の方がこの先の広場で
お待ちですわ。」
「その様だな・・・・・。」
「うぉー!ここの桜、折角の花が蕾っスよ
・・!」

広場に出ると、沢山の桜の木が広場を埋めて
いた。しかし、その花は並木通りの木々とは
違い、すべて蕾だった。満開には程遠い桜の
せいなのか、人通りもシーズンにしては明ら
かに少ない。咲希は集合場所のあたりを見回
すとそこに、依頼主の少女は立っていた――。

歳は高校生程で小柄。マロンの様な柔らかい
印象の長い茶髪をおさげにしているが、ゆる
いニュアンスでしているせいか、あまり堅苦
しい雰囲気にはとれない。控え目なレースの
ブラウスに袴を揺らし表情明るく、咲希の紹
介に合わせ会釈をする。

「こちらが依頼主の秋芒院 知香(しゅうぼ
ういんともか)さんでしてよ。」
「はじめまして。宜しくお願いします!」
「今日はどの様な要件で?」
「実は・・・猫ちゃんが・・・暫く前から元
気がなくて・・」

彼女が抱く猫又は普段の毛並みは白いらしい
のだが、今の毛並みは真っ黒く不穏な気を発
している。その気に障られて桜が蕾になって
いるようだ。

銅が様子を見るために触ろうと手を伸ばす。
ゆるり、と白く長い指先が猫又の胴に触れる
か触れないかという所まで来た瞬間だった。
うなだれるように目を伏せていた猫又の目が
開いたのだった。

バチバチと烏が鳴くかの様な轟音が鳴り響き、
猫又の黒い気から幾らかのの雷が線を引が貫
き銅の腕を襲う。銅は反射的に肩甲骨から腕
を動かし腕を退ける。

「・・・・・・っ!」
「先輩!大丈夫っスか!」
「きゃっ!」

知香の手から猫又が飛び出し銅たちの前へ立
ちふさがる。禍々しく纏う気は獣の様な形に
なり、猫又に覆いかぶさり銅たちを威嚇して
いる。銅は猫又に蹴られ、しりもちをついた
知香を咲希に託し、猫又と距離を置く。柿太
朗は前に出ようと手に力を込める。しかし、
銅はそれを手で制し、止める。

「待て。そんな事でお前の力を使うな。ここ
は私がやろう。」
「っ、・・・先輩・・・・わかりました。」

グルグルと忌わしく喉を鳴らす獣の前に銅は
歩き出る。黒い獣は大きく吠えると銅に向か
って鋭利な牙が生えそろった口を開けて銅に
襲いかかる。銅はそれを大きくよけていつの
間にか足元のサイドバックから出した短刀を
いくつか投げて的確に黒い獣の急所のみに当
てた。獣は大きくよろけるが、すぐに男を睨
み牙で威嚇する。だが、当の男は凛とした表
情を崩しもせず印を切り始める。どうやら彼
は鬼道や陰陽道などを使える様だ。獣はぐぐ
もった鳴き声を上げもがく、がそれすらも別
の額縁にあるかのように銅は無表情にウエス
トバックから抜き出した札を右手で握りしめ
る。すると札は一振りの刀になり、手に収ま
った。 左手を添えると銅は正確に獣の頭の
天辺へと刀を振り上げた。

「白桜の木気(もくき)よ、かの者を
封ぜよ!」
「・・・・・・・・!!!」

銅は振り上げた刀を一閃、振り下ろした。黒
い獣は叫ぶように吠え切られたかと思えばた
ちまち切れ目から黒い気が霧か煙の様に札に
戻った刀へと吸い取られ、収まる。札は鳥居
の囲いの絵のみだけ書かれていた物だったが、
そこに墨で書かれた獣の絵が浮き出てきた。
封印した様だ。咲希、柿太朗、知香はわっと
安堵の表情を見せ、銅に歩み寄る。

「兄上!さすがですわ!」
「すごい・・・!猫ちゃんが真っ白に戻りま
した・・!」
「おお、先輩、かっこよかったっス!」

しかし、銅は眉間を嫌に寄せたまま札をウエ
ストバックから出した小瓶にしまい、またバ
ックへと戻す。銅に寄った3人はそんな異変
に気付き不安げに顔を見合わせる。すると銅
は急に上に着ていた赤いカーディガンを脱ぎ
ワイシャツの袖を捲りあげた。あわあわと顔
を真っ赤にしてパーにした指で顔を覆うふり
をする柿太朗をよそに咲希は銅が袖を捲りあ
げた右腕を見て兄と同じ様に眉間を歪ませた。

「兄上・・・・それは・・・・!」
「嗚呼・・、呪いだな・・・・。」

銅の白い腕には元は無かった黒い蛇の
タトゥーが描かれていた。
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