まったり創作しております。メインはオリジナル小説。そろそろ版権にも手を出したい。

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黄昏マリオネット21
「何だか良くわからないけれど、大変みたいだね、シニョリータ(お嬢さん)?」

実家からの何一つ嬉しくない仕送りである追っ手どもから逃走していたマスターの前に現れたのは、先程自分の店で酒を呑んでいた旧知の友である銅とその知り合いであるウォルナットだった。大通りの中でもたまたま路地の出口付近にいた2人は路地にわんさかいる追っ手に気付き、そのまま路地の影に身を染めて行った。ゆっくりファインティングポーズに構えてマスターに微笑み掛ける。

「マスター1人に多勢で襲いかかる等、野蛮極まり無いな。助太刀しよう。」
「そうだね、銅君。僕も同感さ。困っているシニョリータを放っておくなんて男じゃないよな。」
「あらァ、嬉しい事言ってくれるじゃない・・・!」

追っ手どもは2人がマスターの仲間だと気付くと束になって襲い掛かった。銅は光の様な速さで迫り来る攻撃を軽やかにかわし、腰に回転を付けてかなり鋭く拳を鳩尾に次々と入れて行く。銅は体術や武術等にも長けている様だ。攻撃をかわす所作から拳を的確に相手の弱い部分に突いていく姿はテクニックの熟練さを感じる。しかしながら、ウォルナットも負けていない。荒々しさは多少はあるが少ない筋肉の動きで大きな力を発揮出来るような取り組み方をしており、合気道や柔道に近いスタイルで敵に一撃を次々喰らわせて行く。あらかた片付いた所で3人は手を止めた。

「あとは僕がやっておくよ。銅君、シニョリータを送ってあげてくれ。」
「嗚呼わかった。」
「さぁシニョリータ、お手を。」
「あら、ありがとう助かるわァ。」

恭しく出されたウォルナットの手をマスターは取って大通りまで地に突っ伏した追っ手どもの中を歩いて行くと、その先には400ccのバイクが1台停車していた。銅はヘルメットを被りながらその視線でマスターに『後ろに乗れ』と伝えている。帝雲町での飲酒運転の交通法は体調不良や処方薬の服用等が無く、無事故無違反の場合、規定の飲酒量を厳守さえしていれば飲酒して普通自動車または普通自動二輪車までなら運転しても良い事になっている。ウォルナットは後部シートまでエスコートすると残りの追っ手を片しにそのまま路地の暗闇に引き返して行った。マスターは後部シートに置いてあった予備のヘルメットを被り銅の運転でバー『トゥ・ライト』まで帰って来る事が出来たのである。とりあえず入口すぐのボックス席にあるソファーに勢い良く座るとフェイクファーコートのポケットから莨を出してのびのびと一服し始めた。

「今回は中々に大勢いたようだな。」
「そうなのよー、やンなっちゃうわ!」

深く最後のひと煙を肺腑に思い切り入れ込み吐き出す。そうしてマスターは思い出したように銅にお礼の一杯を作ると切り出してカウンター内に向かった。それに対し銅は無言で頷くとカウンターにあるいつもの席に座りカクテルを作り出すマスターの手をぼんやりと見つめていた。手早く完成したカクテルはシャンギロンゴというかなりシンプルだがかなりトリッキーなものだった。大体マスターが様々な理由でテンションを上げたい時にかなりの濃さでこのカクテルを作る。勿論マスターの杯には氷は入っていないが銅のものには氷を2、3個入れて薄めてあり、それをゆっくり啄む様に飲むのが銅のマスター版シャンギロンゴとの付き合い方だ。

「ったく、頭のネジぶっ飛んでるわよ。迷惑ったらありゃしないわ!」
「・・・今日のはまた一段と濃いな。」

オレンジジュースで割ったのか、オレンジジュースを割ったのか良くわからないテキーラベースの自分仕様のカクテルをマスターは銅の杯と軽く乾杯してから一気にかっくらうと盛大に荒々しいため息をこぼしもう一杯をがつがつと作り始める。銅は半分も飲み終わらない酒を休み休み味わいながらマスターの荒れっぷりに呆れた視線をカウンターに漂わせる。そうして各々のペースで杯を交わしていると、ウォルナットがドアの吊しベルを鳴らして店内に戻って来たのだった。
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