まったり創作しております。メインはオリジナル小説。そろそろ版権にも手を出したい。

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黄昏マリオネット16
その後、『おめめあります』で事の顛末と水神はもう大丈夫である事をやんわり八ツ梅に説明し少し休息を取らせて貰い、日が昇ってから銅一行は下山を始めた。麓の村では山頂で起きた事を誰一人知る事もなく、平々凡々とした時間が流れていた。柿太朗は渇く事が苦手なので帰りも八ツ梅に水筒へ煎れて貰ったアイスコーヒーを大事そうに飲みながら村の中でも活気のある往来を歩いていた。

「あーあ、暑い。これは飲まないとやってらんないっスね!咲希の姉さんもコーヒー飲みます?」
「い、いいえ。私は結構ですわ・・・柿太朗殿の大切なお飲み物ですもの。」
「そうっスか?ありがとうございます!」

柿太朗はこの炎天下を歩く咲希を気遣い、一緒にコーヒーを飲むか進めたが、やんわりと断られた為一人でコーヒーを口に含み、嚥下する。ふと、村を道行く柿太朗は一件の家に目を留めた。

「・・・あれ、この家は兎を飼っているんスね?しかもこんなに沢山。」
「ああ・・・そうだな。」

その家は庭に大きな飼育場を設け沢山の兎を飼っていたのだ。ペットにしては正直売る程あると言っても過言では無い様な余りにも多すぎる兎の数に柿太朗は思わず気になってしまった。黄色や白いふわふわの毛並みの兎が自由に飼育場のスペースの中を飛び跳ねている。

「そういえば柿太朗殿、この兎は中々特殊な種類なのですが、種類の名前を何と申しますかご存知かしら?」
「ん?いや、初めて見る種類っスがなんと言うんスか?」
「・・・。」
「?」

咲希や銅が返答に困った素振りを見せたので、柿太朗はどういう事なのかわからなくなってしまい何度も聞き返してしまった。やっと口を開けた咲希は少し気まずい表情で柿太朗に説明をし始めた。

「・・・この兎はその毛並みの色と体の独特な香りから別名『タンポポ』と言って、眼球からコーヒーに近い味の飲み物が作れるそうですわよ。」
「へぇ・・・ん?『タンポポ』!?」

柿太朗はこの言葉に聞き覚えがあった。ついきの先程までいた山の中にあるカフェ『おめめあります』で店主の八ツ梅の淹れるコーヒーは、『タンポポ』から作られていた。柿太朗は嫌な予感を込めて手に持った水筒を見つめてしまった。

「『タンポポ』で煮出した『タンポポコーヒー』ってまさか・・・!」

タンポポはタンポポでも、植物の『蒲公英(たんぽぽ)』ではなく、『タンポポ』と言う種類の兎の眼球から煮出してある事を確信に変えて柿太朗は驚愕した。銅と咲希の兄妹は呆れた表情をしておのおのため息をついた。

「うげぇー!知っていたなら早く言ってくださいっスよう!!『他人から渡された物を口にするのは控えろ』ってそう言う事っスか・・・!」
「『知っていて飲んでいた』と言う微かな可能性に賭けていたが、案の定そんな事は思い浮かぶだけ無駄だったな。」
「私は少しナンセンスな飲み物だと思いましてよ・・・良く飲みましたわね。」

涙目でこの禍々しい飲み物に対する2人の反応を走馬灯の様に思い浮かべていた。植物と眼球ではそもそも香りも変わるかと思いきや、すっかり油断していた様で得意の鼻も完全に疑いを持たなかった訳である。全く以て残念な男だ。

柿太朗は登山から帰路に至るまで散々な目に合った休暇となってしまった。大きな入道雲が悠々自適青空を漂っており、村には蜩の大合唱が聴こえ初めて来た。
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黄昏マリオネット15
白い女は吹き荒れる吹雪にさらわれて山道のより木々が深い場所に降ろされた。地に座り込んだまま血の赤で服を染める脇腹の傷を手で抑えていると木陰から現れた白蛇が白い女に話掛けて来た。

「大丈夫だった?脇腹・・・痛いの?」
「助けてくれたのね、ありがとう・・・綿彦(わたひこ)。」

白蛇は白い女に近付きながら白髪の少年へと姿を変えていた。綿彦と呼ばれた少年は白い女の元でしゃがんで手を翳し、女の傷口を凍らせて止血をし始めた。

「っ・・・!」
「動かないで世七子(よなこ)。あと少しだから・・・。」
「ええ、死んでから暫く経つけれど・・・痛みは生前同様多少は感じちゃうのよ・・・。」
「こればかりは困っちゃうよね・・・はい、終わり。最低限の冷凍で済ませてるから、本当に止血だけだよ。後は自分の霊力でどうにかしてね。」

白い女、もとい朧世七子(おぼろよなこ)は止血に対して綿彦に礼をするとゆっくり立ち上がった。綿彦は剃刀色の瞳を光無く細め、世七子の傷口がきちんと塞がったか確認した。最低限の冷凍に留めたのは傷痕を残さない為の配慮なのだが、正直世七子は怨霊なので全く以て関係無く、気持ちの問題である。それでも世七子は嬉しく感じ不器用な少年に微笑みを溢す。

「ごめんなさいね、少し失敗しちゃった。」
「大丈夫。兄さんもそこまで気にしてないみたい。」
「そうかしら・・・だと良いのだけれど。」
「・・・世七子にしてはしおらしいじゃねぇか。」
「!」

少し離れた樹木の枝に一人の男が座っていた。綿彦とは対称的な真っ黒いワンレンで前下がり気味のうねり髪。剃刀色の瞳をぎらつかせて綿彦と世七子を睨み付ける真っ黒いスーツ姿。黒い莨を吸う口元には鋭い獣の様な尖った歯が並んでいる。

「蛇王(だおう)・・・いたのね。」
「まぁな。お前は俺の数少ねぇ理解者だ。失うには惜しすぎる。葬式みてえな顔してねぇでさっさといつものドライなお前に戻んな。お前の葬式はとっくに終わってんだよ。」
「あら、ありがとう。」
「兄さん、間に合ったんだね。」
「嗚呼、次の準備は出来ているから早く帰んぞ。」

蛇王の言葉に頷くと綿彦とそれに続いて世七子は妖術で姿を眩ます。俗にいう瞬間移動だ。1人残った蛇王は丁度吸い終わった莨を木の幹に擦り付けて火を消していた。残った吸殻は手から勢い良く出した炎で燃やし消していく。

「待ってろよ、『スカーレット』。」

鋭い牙を露に彫りの深いその顔は意志を固めた笑みを浮かべていた。蛇王も姿を眩ませた夕方の山中はただ静かに風が吹くばかりとなり、どこからか遠くの方で蜩の鳴き声が聴こえて来た。

黄昏マリオネット14
柿太朗と白い女の前に立っていた影が逆光の位置からゆっくりと2人の方へ近づいて来る。すると、少しずつその姿がしっかりと目視で把握出来る様になって来た。檸檬色のストライプ柄ドレスにお揃いの生地のつば広帽。顔は帽子のつばと淡い薄紅色の長い前髪で良くわからないが、その体型からどうやら革鎧を着せた白馬に乗った少女であろう事がわかった。その右手にはレイピアを握っており無言で柿太朗の元へ白馬を歩かせる。ドレスの騎士はゆっくり白馬から降りると、柿太朗を無言で見つめて来た。前髪の影で容姿や表情は何ひとつわから無いが、柿太朗はその視線を受けて胸中を酷い不快感に覆われ珍しくうなじに冷や汗を垂らした。

「なぁに、貴女。お兄さんのお友だちかしら?」
「いや・・・この方は俺も初対面っスね。」
「・・・。」
「まぁ良いわ。邪魔をするなら容赦はしないわよ・・・!」

白い女は柄なし大鎌をドレスの騎士に向けて大きく振り上げた。鎌の回りには風が纏い、まさに嵐を持ち上げている様に見える程の気迫を感じる。騎士は言葉語らず静かに可憐な体を白い女に向け、見上げる。女は鎌を力いっぱい振り下ろした。

「・・・。」
「何っ!?」

鋭い一閃。それが決まったのは大鎌ででなかった。檸檬色のストライプ柄ドレスの裾を翻し、少女が白い女の懐へレイピアの切っ先を突き刺す。華奢だが芯のしっかりした姿勢で真っ直ぐ突き刺す刃から白い女はすんでの所で避けたので致命傷は何とか免れたものの、的確に脇腹をレイピアの刃が抉って行くのをその痛みから感じとる。女に結構なダメージを与えたからなのか、柿太朗を取り巻く水の牢は崩れ自由を得る事が出来た。柿太朗はどう動いて行こうかと状況を様子見していたが、ドレスの騎士はそれに見向きもせず体勢を崩して座り込む白い女にもう一撃を食らわせようとゆっくりと歩き出していた。ドレスの少女の様子は一見リラックスとすら思える穏やかなものに見えるが、次は致命傷・・・と言わんばかりの殺気が舐める様に周囲に広がりじっとりとした空気が一帯に溢れる。白い女は初めて体感する限りの無い恐怖からまばたきすら忘れぐっと目を開いたまま浅く息をして身を震わせる事しか出来なかった。レイピアの刃が煌めき女の胸元へ突き立てられる。

「・・・?」
「これは・・・!!」
「氷・・・!」

柿太朗が二人の様子を見るとドレスの騎士が突き立てたレイピアの切っ先から氷の塊が現れ、白い女を傷付け無いようにその刃を塞き止めていた。ドレスの少女は突然の事に思う事があるのか無いのか、無言のまま立ち尽くすばかりだった。すると、どこからともなく強い吹雪が吹き荒れて白い女をさらって行ってしまった。最後に吹雪の吹き行く先の木陰から白い蛇がこちらの様子をちらと伺ってから去って行くのを柿太朗は見逃さなかった。

「蛇・・・?」
「先輩・・・!」
「柿太朗殿!」

ふと、気付くと背後の方向から銅と咲希が柿太朗を探してやって来た。銅はどうやら去り行く白蛇に気付いたらしい。柿太朗は振り向くと見慣れた本物の顔に安堵の表情へと顔を緩ませる。

「わざわざ探しに来てくださったんスね!」
「あら、掠り傷までなさって柿太朗殿は何をしていましたの?」
「あ、嗚呼・・・これっスか?さっきまで先輩の偽物がいたんですけど、色々あってそこにいるドレス着た少女の騎士が助けてくださったっス!」
「・・・少女の騎士?」

銅は柿太朗の話に思わず眉間を寄せた。柿太朗の指差す先どころか今この周辺一帯には3人以外には誰もいない。樹木に斬り傷が刻まれ争ったであろう風景が静かに陽に照らされているだけだ。柿太朗は2人のしっくり来ていない反応に疑問を残し今さっきまであった状況を思い出しながら後ろを向く。

「・・・あれ?いなくなってるっス。」

気付かぬ内にドレスの騎士もいなくなっていた。

黄昏マリオネット13

「あの、水龍の術は、貴方がやったんスね?」
「・・・。」

無言の肯定、と言わんばかりに本来の姿を現した銅に姿を偽っていた相手は、赤い唇を苦そうに食いしばり恨めしそうに柿太朗を睨み付けた。 長い白髪をきつく結った日本顔の若い女性。服装から見え隠れする白い四肢は無駄なく筋肉がついておりまるでアスリートの様な体型だ。柿太朗はそんな女の姿を見て瞳をアーチ型に歪ませて、より一層胡散臭く口角を上げた。

「匂うっスよ、貴方から・・・呪詛の香りが。」
「何もかもバレバレだったのね、がっかりだわ。」
「何でこんな事しちゃったのかわからないっスけど、池、綺麗にして貰えないっスかね?」
「それは出来ないわ・・・命令だもの。」
「命令?」

ごうっ、と強い風が吹き白い女は背に帯刀していたひと振りの刃の部分に持ち手のある柄なし大鎌を抜き柿太朗に突進して来た。柿太朗はぐっ、と脚に力を込めて高く飛び上がり難無くひらりと身軽に躱す。

「あら、意外と躱すのね。サーカスみたいじゃない。」
「当たったら痛そうじゃないスか。」
「そうよ、とっても痛いわよ!」

女がにっかりと口角を上げ、柄無し大鎌を振り上げ間髪入れず何回も柿太朗に斬り掛かる。のらりくらりと躱していく柿太朗だが、途中から大鎌の太刀筋がかまいたちの様に大鎌から離れて斬り掛かって来る様になり、柿太朗も間合いを空けて躱し始めた。

(これも、術のひとつっスね・・・一見風属性のかまいたちに見えるが、これは水属性の刃だ・・・)

柿太朗は躱しながら敵が仕掛ける技の本質を見極めていた。ある程度間合いを詰めて行くといきなり立ち止まり、地面に両手の平を思いっきり付ける。すると、地面の土が壁の様に迫り上がり水属性の敵の攻撃をしっかり防御していく。例えるなら土のバリアを柿太朗は出したのだ。

「だったら、これっス!!」
「何?・・・お兄さん、地属性の術士だったの!?」
「まぁそんな所っスね、水属性の貴方より有利な地属性っスよ!」

水圧の刃は土の防御壁に激しく弾かれると何も変哲の無いただの水になり、柿太朗の足元を濡らしていく。白い女は自らの術が効かない事に気付くと攻撃を潔く止めた。柿太朗も防御の術を解き、互いに睨み合う。

「興醒めだわぁ・・・。」
「別にあんな池を濁した事に対してこらしめようなんて事はこれっぽっちも思って無いっスけど、何か必然性を感じてね。」
「必然性?」
「アンズメコマドリの瞳・・・呪詛に使ったり、してないスかね?」
「どうだったかしら?教えてあげても良いけれど・・・足元、お気を付けあそばせ。」

クスリ、と嘲笑を口元に表した白い女。再度水圧の刃を仕掛けるが、柿太朗の地属性の防御壁にはなすすべも無くひたすらに柿太朗の足元は水溜りを成していく。柿太朗もこのままでは埒が明かないと現状に飽き始めていた所だった。しかしそれもいつまでも続かなかった。突然、柿太朗の足元に溜まっていた水が柿太朗を取り囲み水の檻となってしまった。流石に柿太朗もつまらなそうに下げていた眉尻を上げて関心を示す。

「ほう、こんな事も出来るんスか。」
「折角だから少しだけ教えてあげる。確かに水神からアンズメコマドリの瞳を買い付けて琥珀に見立てて呪詛を掛け、猫又にファンからのプレゼントのフリして郵送で贈ったのは私。水神とその池に呪詛を掛けて、余計な事喋らせ無い様に呪い漬けにしたのも私よ。でも、これは全て命令。理由は知らないけど命令されたからやっただけよ。」
「命令?誰のっスか?」
「これは教えたら私の首がトンじゃうからダメ。まぁ私、元々この帝雲町の地縛霊だから死んじゃってるんだけれど。確実に言える事は今まで掛けた呪いは、猫又と水神2人の生命を脅かすものでは無いって事だわ。」
「2人の・・・?」
「ええ、そうよ。」
「と言う事は、初めから狙いは・・・!」
「あら、それ以上はお兄さん、自分自身の立場を考えてからにしてちょうだい。私が教えてあげたのも別に優しさからじゃないわ。お兄さんを殺すか、呪い漬けにしてものを言えなくするからよ。」
「うーん、そういえばそうでしたっスね・・・。」
「何?そのお間抜けな返事。お兄さんは囚われている自覚が足りないんじゃないかしら。」
「どうしたもんスかね・・・。」

柿太朗がこの現状をどう切り抜けるか悩んでいるのも束の間、転機は突然訪れた。木陰から突然何者かが白い女に飛びかかり何らかの攻撃を仕掛けて来たからだ。柿太朗はかなりの不意打ちで助けが来たので心の中にかなりの違和感が渦巻いていたが、銅がたまたま自分を見つけて助けてくれたのかと思い表情を明るめて顔を上げた。

「痛っ・・・誰よ!!」
「えっ、先輩!・・・じゃない?」

柿太朗と白い女、2人の目の前現れたのは銅でも咲希でも無く、見知らぬシルエットの影が逆光でゆらゆらと立っていた。
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