まったり創作しております。メインはオリジナル小説。そろそろ版権にも手を出したい。

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小話『大きなお友達』
創作に関してピクシブやこのブログ等のオンラインでの活動を主にする為、
過去にコピー本掲載用に書いていた未発表の作品等や、実際にコピー本に
掲載していた作品も手直しし、ウェブ上で掲載する事にしました。少しずつで
はありますが掲載していきます。
いつも通りこちらで先行して掲載した後、ピクシブへも投稿する予定です。

今回は未発表の小話『大きなお友達』です。
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黄昏マリオネット11

「兄上!大丈夫ですの・・・?」
「嗚呼・・・大事は無い。」

銅の手から地へと叩きつけられた小瓶の中身はバチバチと轟音を立て地面を花火の様な鮮やかな炎で燃やしていた。自らの指の火傷と地面を照らす炎を見比べて、銅は水質検査の派手な結果に対し訝しげな表情を見せた。火傷は指の先に痛々しく広がっているが、本人はそこまで気にしてはいない。見た目のインパクトがあるだけで痛み自体は無い様だ。

「久々にこの薬品を使ったから、少し驚いただけだ。」
「もう、兄上ったらそうおっしゃいますけれど、結構な火傷になってますわよ。水ぶくれは潰さないで下さいませね。」

咲希は兄の手をそっと握り火傷の様子を軽く視診する。13歳程の少女が見てもやはり大した火傷だった様で、兄に困った顔を見せた。どうやら銅は痛みに強い体質の様である。柿太朗も火傷の状態に気付きお冷しを作る為にと自分の荷物からハンドタオルを取り出した。だがしかし、それをぬらそうと池へ近づくと銅が声を掛けて来たので制止されてしまった。

「待て、池の水は辞めた方が良い。」
「どうしてです?」
「良く見ろ、薬品の色は紫に変化している・・・これは、どの様な状態か忘れたのか?」
「あっ・・・池に呪詛の類が溶けているんスね。」
「紫の濃さからして中々の濃度の様ですわ。」

柿太朗は薬品を良く確認しその変化に驚きの表情を見せた。地面で炎の勢いも落ち着き、小さな火花がパチパチと光るだけのあざやかな緑色だった液体の薬品は、池の水を受け入れる事によって濃い紫に変化している。この水質検査薬は水中に含まれている一般的な成分以外にも、呪詛や妖力等の『一般的ではない成分』も調べる事が出来る様だ。

「まだお前が八ツ梅から貰った怪しい麦茶の方がましだ。」
「そうだったんスね・・・すぐぬらします。」
「いや、実際に麦茶を使わなくて良い。お前は渇く事を嫌っているだろう?貴重な飲み物だ、大切にしろ。」
「先輩の傷の方が心配っスよ!気にしないで下さい。」
「柿太朗、本当に大丈夫だから私の事は気にするな。」
「!・・・はい、わかりました。」

普通に言っても聞かない相手に威圧的な凄みを声に込めて銅は『大丈夫』と伝える。傍から見たら命令しているかの様に見える程の迫力に柿太朗もやっと気持ちを冷ます事が出来、先輩の話を聞き入れる。それでもさすがにこのままでは、と咲希に諭され銅はしぶしぶ手を妹に預けて簡単な処置を頼む事にした。

患部は右の指先から手の平に掛けての火傷だったので、咲希は荷物から特別に調合した薬草の成分が配合された傷の保護シートを取り出して患部を包み、その上から手袋型のサポーターで患部を的確に保護した。見るからに『一般的ではない』処置用具の数々はこの副業の為に用意された物の様だ。

「仕事がまだあるのでとりあえず保護だけですけれども。仕事が終わりましたらきちんとした手当をいたしますわ。」
「嗚呼、充分だ。」

右手に拳を作り、開く、また拳を作り、開く。拳の結ぶ開くで右手の動作に問題がない事を確認して銅は、妹の的確な処置を受け入れる。改めて池の探索を開始する事にした3人は水辺の反対側にある岩屋を調べ始めた。柿太朗は積み上げられた岩の隙間から祠がある事に気付きそちらも調べようと岩に触れる。事態が急変したのはその時だった。岩屋の中から濃厚な瘴気が表れて池の大気中にあっという間に広がってしまったのである。異変に素早く気付いた銅と咲希も柿太朗のもとへ集まり状況の把握を柿太朗に求めた。

「何があったのです柿太朗殿!」
「岩屋の岩に触れたらなんか瘴気がどばっと出て来ちゃったっス・・・!」
「お前は次から次へと・・・困った男だ。」

大気に溢れた瘴気に池の中の呪詛が反応する。すると池の中から突然球状の物が表れた。上下に装飾があり呪詛の様な濃厚な黒色のそれは瘴気を放ち回転しながら宙に浮いている。銅たちは次々に起こる池の異変に気を張り巡らしながら状況に応じて臨機応変に対応出来る様体勢を整えた。案の定その球の周りを囲むように池の水が無数の龍となって3人を威嚇し始めた。

「水の龍か・・・。柿太朗、お前は渇きに弱いが水に強い訳ではない。とりあえず咲希を守る事に徹底してくれ。」
「了解しました。先輩もあまりお怪我をしないで下さいよ。痛みは感じなくとも傷は傷っスからね。」
「嗚呼、気を付ける。お前もいつも言っているが、あまり調子に乗って無闇に手の内を出すんじゃないぞ。」
「Ja!気を付けるっス!」
「兄上仕掛けて来ますわ!右上からでしてよ!!」

殺気立った水龍が3人目掛けて牙を剥き出して突進して来る。咄嗟に銅は道具ポーチの中に手を入れて探し出し『プロテクター・ミラー』を素早くかざしてバリア壁を作り、攻撃を弾く。バリア壁に弾かれた龍はその衝撃で裂け散るが、所詮は水で形を成しているものなので、限り無く表れてしまう。咲希は特殊な赤色の眼鏡を掛けて目の前にある球状の物体の成分を分析し始めた。

「やはり、あの球状の物の活動を止めなければ終わらない様ですわね。」
「咲希、あの球の分析を頼めるか?」
「もう始めています!成分的には水晶玉にほぼ等しい物で構成されていますわね。ですが一見、あの水晶から発する瘴気が池の呪詛に反応して水龍を操作している様にも見えますが、あれはいわばアンテナ。呪詛による水龍の形成、操作を可能にするために瘴気を集める役割をしているようでしてよ!」
「要は道具単体または付喪神の類による水龍の発生ではなく、別に術者がいるって所っスかね?」
「その様だな・・・さらにいうならその術者は水晶の持ち主とは違う。」

銅はウエストバッグから札を1枚出して握りしめる。札は一振りの刀になって銅の手中に収まった。攻撃の構えをとり気を張り詰め、集中する。

「清き池の水気(すいき)よ、かの者らを鎮め給え・・・」

高速の太刀筋、一刀両断。しかし実際に切ったのは水晶玉そのものではなく、それに注がれる瘴気と術による気の道筋である。術として成立しなくなった水晶からは瘴気が消え、水龍も元の水となって池へと戻った。それと同時に岩屋の方から何かが倒れる音がした。銅はその音にすぐ気付き、岩屋へ向かう。

「咲希、急いで池に清め剤を。岩屋に瘴気が残っていても多少なら抑えられるだろう」

咲希は急いで荷物の中にある錠剤を数錠池に投げ入れる。池の中の純度が高まり透き通る。銅は池の水を岩に掛けながら岩屋の岩を危険がないか一つずつ叩きながら慎重に外していく。幾つか外すと中から朱塗りの木で出来た小さな祠があった。その手前には、人が一人倒れて意識を失っていた。

意識を失っていた少年は案の定、探していた水神だった。
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