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まったり創作しております。メインはオリジナル小説。そろそろ版権にも手を出したい。

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黄昏マリオネット10
黄昏マリオネット10



「ふーっ!やっぱり水分がないと、この暑ささはやってらんないっスよー!」

柿太朗は水筒の中身の麦茶を一口飲んで嬉しそうににんまりとした笑みを浮かべる。アンズメコマドリと言う鳥を飼っているという水神を訪ねる為に、銅達は登っていた山道をさらに登りその頂を目指していた。

「お前、水筒用意していなかったのではないのか。」
「実はですね、さっき行った『おめめあります』ーって変な店から出る時に、店主の八ツ梅さんが水筒くれたっスよー!意外にいい人でしたね!変な人っスけど。」
「・・・他人から渡された物を口にするのは控えておけ。」
「ヤー、わかりましたよ・・・。」

疑問に重ねて訝しげな顔を浮かべる柿太朗の様子を気にも止めず、銅と咲希は登り坂の上へと再度歩き始めた。柿太朗は疑問符を脳内で浮かべたまま2人の後ろを歩く。



***
山の頂にある池。
池にしては大きなものでその水は深い青色だとわかる程澄んでいて、綺麗な物だった。その水中を良く良く見ると、何かが素早く泳いでいる。池中の水を引き連れるかのごとく悠々と泳ぐそれはまさに水そのものとしか言いようが無く、姿として見る事は難しい。姿の無いそれが池の中心でひたりと動きを止めた。いくつかの水滴が何もないのにその辺りで小さく跳ね回り、その真ん中の水中からぼうっと目が浮んだ。深い、水底の様に濃く、深い群青色の瞳が2つ。それはきょろきょろと周辺を見回し誰もいない事を確認すると、跳ね回る水滴が少しずつ糸を織りなす様に集まり形を作り始めた。完成した形は人の手その物になり、見る見る内にふっくらとした肉の質感へ変貌を遂げて行き、それは水面に掌を置いてぐっと押し上げて身を乗り出した。プールからプールサイドへ手をついて上がるように勢いをつけて水面上へ表れて行く姿の無かったそれは、先程から跳ね回る水滴の密集により姿が表れていく。髪の毛は瞳と同じ群青色が短く軽やかに跳ね上がり、顔の横の長い部分を左右それぞれ結っている。肌は青白く、なめらかに伸びる四肢は細く今にも折れてしまいそうだ。最後に柔らかい素材の着物と袴を緩く身に着せて、姿が無かったそれはいつの間にか小柄な少年になっていた。水面上におもむろに立ち上がった少年は、水面を滑る様にゆっくりと歩き水辺へと降り立つ。ふと、1匹の白い魚が池の中から水辺の少年の近くへ水中を真っ直ぐに泳いで近付き、赤い瞳を鈍く光らせてぎろりと少年に向けて来た。

「・・・。」

白い魚の視線に気付いた少年はまた池の中へ溶ける様に爪先から入り水と同化してしまった。暫くして池の中から先程の様に複数の水滴が水面をあたかも遊び回っているかの様に跳ね回りながら姿の無くなった少年と今度は共に移動して行く。少年が降り立った場所と反対側の水辺には木々の影に覆われて静かに建つ岩屋があった。固く積まれた岩々の隙間からは祠の様な物が見える。姿の無くなり水と化した少年は、その岩屋の前まで泳いで来ると水の深い所へ潜った様でそのまま気配も消えた。水滴もそれを追う様にぽちゃん、とひとつ飛び跳ねて無くなってしまった。変化の無くなり、水揺れる事すら無いかの様に静かになった池の中には白い魚が1匹悠々と泳ぐだけである。

その一呼吸も置かないタイミングで銅とその妹の咲希、そして2人の同居人である柿太朗が岩屋とは反対側の山道のあたりから歩いて山頂であるこの池に辿り着いて来た。木々の覆い茂る中この池の周りだけ開けており、ここが山頂だと一行はすぐに気付いて池の水辺までゆっくり歩いて近付いて行く。

「ひょー、これはまた・・・大きい池っスね。」
「兄上、奥の方に岩屋がありましてよ。八ツ梅さんがおっしゃっていた物の様ですわ。」
「中に祠もある様だな。一応水質も調べておくか。」

銅は腰に取り付けた荷物を入れている鞄を片手で無造作に漁り、試験管のような細長い小瓶を一本取り出した。形はまさに試験管なのだが口の方に模様が彫られており、コルクで栓がされている。中にはあざやかな緑色の液体がシュワシュワと火花を出しながら入っていて一見するとメロンソーダを連想してしまう。
銅は小瓶と一緒に取り出したスポイトに池の水を吸い入れてコルク栓を開けた小瓶に1、2滴そっとたらす。ゆっくり小瓶をくゆらせて混ぜると池の水が入った液体はバチバチと火花の火力を上げてみるみる内に花火の様に小瓶の口から色とりどりの火を吹き始めた。

「先輩、火凄く出てるっスね・・・大丈夫っスか?」
「・・・っ!!」

柿太朗が銅に声を掛け、それに返事をしようとしたまさにその時。小瓶から吹き出た火がさらに強まって、小瓶を持っていた銅の指を勢い良く掠めた。突然の事に銅は小瓶を地面へと叩き付けた。
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