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まったり創作しております。メインはオリジナル小説。そろそろ版権にも手を出したい。

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黄昏マリオネット7
黄昏マリオネット7



カラン、コロン。
ドアにつけられた吊るしベルが不規則な旋律を奏でて来客を出迎
えた。銅は先日行きそびれてしまった知人の店の扉をゆっくり開
き、薄暗い空気が漂う地下の店内に静かに脚を入れた。



「いらっしゃいませーぇ」

扉の先には、華美、と言ったら聞こえは良いが、どちらかと言う
といかがわしい様な派手な趣味に走った衣装に身を包んだウェイ
ター達が銅を歓迎する。フリル、リボンならまだ聞こえは可愛い
が、布の量がいささか極端に少ない。さらに拘束具にボンテージ。
マッチが乗りそうな程のばつばつ睫毛にウィンクを添えて。店内
をくねくねと闊歩する全ての従業員が男だ。銅はそのいかがわし
い雰囲気の空間を抜け、その先の趣味の元凶がいるカウンターへ
たどり着く。そこにはウェイター達の比にならないほど派手な装
いに身を包んだ趣味の源・・・・この店のマスターがぷっくりリッ
プの口元を微笑ませて莨の煙を纏っている。ふと視線を落とすと
カウンター越しには不自然に一つ空いた席がある。銅はそこに腰
を落ち着けた。マスターはコットンキャンディー連想させるピン
クの髪を俗に言う盛る様に結って、白い肌から際立つ黄緑の瞳は
まるでビー玉かの様で吸い込まれそうだ。身に纏う服装、という
よりかは服と言って良いものかとても謎ではあるが、というのも
ほとんど裸で、上半身はレザーのチョーカーのみ。ボトムはボン
テージの露出度の高いズボンを履いて、ピンヒールのパンプスで
妖しく足をくねらせる。と言っても、銅からはカウンター越しな
ので上半身しか見えていないのだが。

「ぁあーら銅ちゃん、いらっしゃい。最近来なかったじゃない。
どうしたのよ。」
「・・・花見だ」
「寂しかったわーぁ、もうっ。で、今日はどうしたの」

銅の知人、マスターはトン、と夕方の様なピンク色のカクテルを
カウンタのテーブルに置いて、問掛けた。その問いに銅は一つの
指輪をカクテルグラスの影を手に塗るかの様にゆっくりと差し出
す。そう。この前の一件で猫又の蘭から貰った琥珀の飾りのつい
たリングだ。

「これだ。」

その差し出された手にマスターは自分の手をいやらしく重ねる。
そっと指輪を受け取ると指でつまみ転がして戯れる。指輪の飾り
である琥珀は球状の形をしていて、普通の琥珀色なのだが、奥の
方が青黒く濁っている。マスターはばさばさとしたまつげの目を
歪ませオーバーアクションで反応を返す。

「あーらグロい色ねぇ。」
「どうにか、調べられるか」
「あーら、なめんじゃないわよーぅ。オカマはねぇ、玉の扱いに
は慣れてんのよー。」

マスターが着けた莨(たばこ)の煙を見ながら銅は疑問を主張す
る。その言葉にマスターはガッツポーズで勢い良く大丈夫だと、
自信満々に笑顔を見せる。しかし答えるが、それは思い切った下
ネタだった。しばらく沈黙が苦く染み渡り、マスターはその間自
らの華奢な体を無意味にじれったそうにくねらせた。銅は静かに
その発言に無視の方向へ切り返し、沈黙を冷たく溶かしてしまう。

「・・・そうか。では失礼する。」
「あぁーんら、つ・れ・な・い・わねぇ・・・。お昼位食べて行
きなさいっ。」

早々に踵を返そうとする銅をマスターはその意思の大きさを表す
様な大声で引き留める。あたかも”いかさないわ”と顔一面に書
かんばかりの表情で銅に詰め寄る。しかし銅ははっきりとこう切
り替えした。真面目で怜悧な瞳が小ぶりの眼鏡越しにマスターの
姿を気だるそうに見やる。

「連れと昼飯を
「ツレツレって・・私とどっちが大事なのよおぉっ。」
「連れだ。」
「ええっ」

シンプルかつ明確な理由を述べる銅。しかしそれも言い切る事を
許されなかった。マスターの怒り、とまでは行かないがマスター
のおちょくりに銅はきっぱりと即答で答える。おちょくりと言っ
ても一応本気だったらしく、マスターはあっけにとられるが、直
ぐにいつものオーバーアクションで勢いよく莨の吸い殻を灰皿に
押し付ける。

「キイィィ、あの小僧めがアタシの銅を・・・っ」

テンション高くマスターは天井を仰いで拳を握った。今の彼なら
猪一頭二頭位なら軽く殺してしまいそうな形相だ。傍の銅は困っ
たものだと首を軽く降る。しかしそれもまた、お互いの久々の会
話を楽しんでいる様だ。じゃれているのである。



交わし合う談笑、ちらちらとネオンカラーのライトが暗闇に閃く。
そんな楽しい時間もつかの間に。すぐに外の世界は日が暮れて帰
る時間になってしまう。朝から呑もうとすぐ夜に。仕方ないから
呑んでいたらまた朝に。ここは、世界につかれた大人たちが一時
の人生における娯楽を嗜むバーなのだ。しかし、銅には割と興味
のない話な様で、銅は席をすんなりと立ち、身の回りの確認をし
始めた。

「まだいなさいよぉ。あんなヤツ、忘れちゃいなさい。はいっ、
飲んでぇ、飲んでえええぇぇぇ。」
「何を言っているんだ、定の時間ギリギリだと言うのに。」
「嗚呼っ。」

フラレたわ・・・マスターは大げさに呟いて銅を見送る。
口元は心なしか微笑んでいる様だ。リップクリームがよれただけ
なのかもしれないが・・・。

銅は柿太朗の元へ向かったのだった。
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