まったり創作しております。メインはオリジナル小説。そろそろ版権にも手を出したい。

黄昏マリオネット19
3人は乾杯したカクテルを一口飲み入れる。無駄にとろみがついているが甘さは控えめで万人に受け入られそうな味である。カクテルの一口目を丁寧に堪能した所でウォルナットは用件を銅に伝えた。

「そういえば、その学校がどこかは調べる必要は無さそうだ。」
「・・・何?」
「ほら、これ。」

ウォルナットは胸ポケットから出した赤いメモを銅の前に差し出した。そこには白い文字で『四丁目の女学校にある図書館の本が読みたいわ』と手書きしてあり、その下に同じ筆跡で本のタイトルが書かれている。

「四丁目で女学校はひとつだろう。この前君たちが二丁目の山に行った時、マゼンダに頼まれて僕らが助っ人に行く予定だったんだ。しかし、間に合わなかったみたいで山の麓に白髪のシニョリータが倒れていただけだった。」
「・・・そうか。」
「まあ、そう不機嫌に見える顔をしないでくれ。美人がもったいないぞ。話には続きがあってだな、その側に落ちていた彼女の学生証はまさに・・・『四丁目の女学校』だったんだよ。」
「あーら、四丁目にある女学校って中々のお嬢様学校だったじゃないかしら?部外者はその中の図書館どころか門すら通れないわよ!」

マスターは頬に手を当てて驚く。帝雲町に学校団体は『帝雲学園』ひとつのみでその学園長はまさに帝である。町中にその分校がいくつかある形になり、四丁目の女学校は例にもれず帝雲学園の分校にあたるのだ。分校によって校風も全く違い、学生間でも同じ学校という認識は極めて薄い。件の女学校は富裕層や才能のある女子が主に通う帝雲学園屈指の名門であるらしく、その分ガードが強固という訳だ。

「・・・と、なるとやはり内部に非公式に潜入して調べるしかないか。」
「おお、珍しくヤル気だね銅君。」
「私もツテを訪ねて上手い事出来るか聞いてみるわァん。」
「嗚呼、宜しく頼む。」

目を伏せる銅の視線の先には空になったカクテルグラスが。話も纏まって来た所だったので銅は改めて帰り支度を始めた。

「流石に帰らないと咲希に怒られる。」
「嗚呼、今日の会計は僕持ちで構わない。引き留めたのはこちらだからね。」
「すまない。」
「素敵なひと時だったわ。表までお見送りさせて頂戴。」

さくっとウォルナットがスマートに会計を済ませフェイクファーのコートを羽織ったマスターと銅の3人はバーの表まで出る。今日は日射しは強いが湿度がそれなりにありその癖比較的寒く、往来には冬の様な装いの人々も良く見掛ける。季節の概念は余り無いこの帝雲町には今日のような季節では例え切れない天候の日もある。そんな中裸同然の衣装に上着だけとりあえず羽織り、外へ出向くこのバーのマスターは中々根性のある人間の様だ。

「また何かあったら連絡してくれ。」
「ええ、わかったわ。ウォルナット君もまた遊びに来てねん。」
「カクテル、美味しかった。今度またゆっくり遊びに来るよ。」
「はい・・・また。」

完全にほの字のマスターは小さく手を振って2人の男を見送った。角を曲がり姿が見えなくなるのを確認してから一息付く。吐く息はほのかに白く色付きゆっくりと漂って消えた。昼間それなりにあった湿度はかなり減ってしまった様で次の季節はどうやら冬が来る事を町の人々に予感させる。

「さぁーって、戻って呑み直そうかしらねェん。」

マスターはコットンキャンディの様な甘いピンクの髪をかき上げ何気なく空を仰いだ。日も雲に隠れてしまい灰色い寒空がビルの隙間から見えているだけだ。平々凡々。何気無い日々のひと時を噛み締めるかのようにマスターは瞳をきつく閉じ眉間にそっと片手を添え白い深呼吸をした。

「このような所にいたのですか、若殿。」
「・・・!」

いつの間にいたのか。マスターのすぐ後ろには3人程の男が立っていた。3人とも顔をマスクやネックウォーマーで隠していいるが服装はラフ、リーマン、学生風と一貫性が無く一見カラーギャングにも見えるがその眼光鋭く、とてもゴロツキに出せる殺気ではない。マスターは振り向かずもマスカラでまつ毛を過剰に盛った目を瞳孔までかっ広げてその殺気に意識を向けた。

「もう私を見つけたの・・・早いわね。」

マスターが追い求めて来た『平凡』はいつまでも続くものでは無いらしく、状況は突然かつ激しく転換していくようである。この突然現れる冬と共に。
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黄昏マリオネット18
カラン、コロン。

「あーら!銅ちゃん、ご無沙汰じゃなァい?」

ドアに取り付けられた来客を知らせる吊るしベルを鳴らして銅が姿を見せたのはいかがわしい雰囲気が漂う広めの地下バー。店員もボンテージだらけの『服』とは呼び辛い衣類を着用しており、その中でもコットンキャンディカラーに髪色を染め上げている最も際どく華美な女装の男はこの店のマスターだ。銅とは旧知の仲の様で互いに何も言わずともカウンター越しにひとつだけ不自然に空いた椅子に着席した銅にマスターはそっとカクテルを1杯作り始める。

「嗚呼、八ツ梅の所にな・・・。」
「あー『おめめあります』!?あの子、ちょっとブッ飛んじゃってたでしょう?迷惑掛けなかったかしらァ?」

マスターはつけまつげをばさばささせた目をかっ開いて驚く。銅は差し出されたマスターの悩ましい気持ちを表した様な水色から藍色のグラデーションに彩られたカクテルをそっと口にする。ジンベースなので意外にさっぱりとした味だった。その点はしっかり考えているあたりマスターは店のトップなだけある。銅はゆっくりと一口飲んで咥内にその味を確かめる。

「・・・問題無い。」
「そう?なら良いけど!・・・あ、何か飲食物出されたかしらん?大体ヤバいもの使ってるから口にしちゃダメよ!?」
「嗚呼・・・そうだな、食べてないな。」

食べて『は』ない・・・自らの同居人、柿太朗が口にしたタンポポコーヒーを思い出して銅はそっと言葉を飲み込み口をつぐむ。先に話を聞いておけば良かったと若干の後悔を胃の辺りに感じた気がした。

「それで、あのグロい琥珀について八ツ梅に何か聞けたのかしら?」
「そうだった・・・今日はその件で来たんだ。『おめめあります』に行ってから色々あってな、その琥珀玉に呪詛を掛けた者の通う学校の制服まで突き止めたんだ。これなんだが・・・八ツ梅が制服の絵を描いてくれた。」
「えっ、あの子が!あんな弱々しい指でペンとか握れるの!?」

マスターはつけまつ毛だらけの目をかっぴらく程驚いてイラストをメモした紙を見る。葉書大の紙に描かれた制服姿の白髪の女。筆のタッチは非常に軽く色味は薄いが意外に八ツ梅は絵心があるようだ。強いて言うなら紙からは微かに独特な香りがしている。例えるならお香の様な癖のある香りだ。

「・・・あらぁ、結構絵として成立してるじゃない。変な香りはするけど。」
「その学校がどこかと、どの様な学校かという事を調査して欲しい。」
「少しだけ時間頂戴・・・最近団体貸し切りが多くて忙しいのよ。」
「構わない。」

銅は取引があっさり纏まると、お代をカウンターに置いて席を立とうとする。マスターはその姿を見て眉を吊り上げて無理矢理高くした猫撫で声で銅を呼び止めた。

「ええー!もう帰っちゃうの!?いやん!」
「お夕飯の買い出しにいかないと、咲希が待ってる。」

妹が待っているなら仕方ないとマスターは眉を八の字にしてお代を受け取ろうとする。しかし会計がその場で成立する事は無かった。銅の横から長い腕が降りてきて、その指をお代を掴んだマスターの細い指に絡ませる。一足先に腕の持ち主の顔を見たマスターは表情を女そのものにして押し黙ってしまった。とどのつまりほの字なのである。銅がうっとおしそうに背後に視線を見上げると、イタリア人の様な彫りの深い垂れ目の優男が立っていた。

「久しぶりだね、『シニョリータ(銅ちゃん)』。」
「・・・私は男だ、ウォルナット。」

銅は怒りを凝縮した様な重たい声でウォルナットと呼んだ男のからかいに訂正を掛ける。ウォルナットは太めの眉をぴくりとあげて銅にウインクを溢した。突然表れたウォルナットと呼ばれる優男の登場にマスターはスイートピンクの前髪を片手の指先で整え出した。マスターは俗い表現をするならオカマだが、今の表情は女である。もう片手は今しがた銅から出されたお代を掴んでいたが、ウォルナットにその手を捕らえられ動かせない。その分マスターの心臓は緊張で早鐘をうっており、鼓動の音が周囲に聞こえてしまいそうだった。必死に平常心を装いよそ向きの言葉使いで声を掛ける。オカマは初対面の美青年に弱い。

「あ、あらぁ・・・?銅ちゃんの知り合いにこんな素敵な男性がいらっしゃるの~?もっと早めに紹介して欲しかったわぁ・・・。」
「シニョリータ。僕にも一杯作ってくれないか?あ、そうそう『シニョーレ』の・・・銅君にもおかわり、頼むよ。」
「はァい・・・急いで作ります・・・。」

ウォルナットはメロウな指の動きでマスターの指からお札を取るとさりげなく中性的な容姿の銅をからかいながら銅のズボンのポケットにそっと戻した。『まだ帰るには早い』と視線で銅に伝え隣の席へ座る。マスターは恋心を液体に変えた様な淡い桜色のカクテルを2杯作り2人の前にそっと置く。わざわざ銅のコースターもとっておきの綺麗なものに替える程の気合いの入れ様だ。わかりやすい。

「そうそうシニョリータ、君にも一杯。銅君との再会に一緒に乾杯してくれないか。」
「あらぁ、ありがとうございます~!一緒に乾杯出来て光栄だわぁ・・・!」

マスターは慌ててもう一杯カクテルを作り始める。銅は少しどころかかなり不服な表情でカクテルに視線を落とす。

「・・・。」
「なんだい?ご機嫌斜めじゃないか。」
「何の用だ・・・」

ため息を吐き出す様に銅はウォルナットに用件を早急に伝える様に言い、相手からのからかいを面倒そうにあしらう。マスターも自分のカクテルが仕上がった様で冷えたグラスに注ぎ入れる。嬉しい気持ちが強く出たのか少しだけ2人に作ったものよりリキュールが多くなってしまった様で同じレシピなのに赤みが若干濃いものがグラスに満たされる。3人は杯を小さく合わせて乾杯した。

推すと言う事
どうも!黒飴屋です。
合併1発目は元個人ブログからのお引っ越し記事です!




そういえば最近『DD(誰でも大好き)』という言葉が出来たみたいで、原則箱(作品)推しです。と伝えると「DDなんですか?」と聞かれるようになりましたが、

私はDDではありません。

DDの方は大半は「みんな1番だしみんなの1番になりたい!」の方が多い印象を受けました。しかし私は別に誰かの1番になりたい訳でも無いし、誰も1番では無いのです。私が1番なんておこがましいのです。

好き過ぎるとその作品が、またはその空間が好きになるのです。食事も人生も綺麗に召し上がった方が楽しめますでしょう?

コンカフェだと特に。男性の常連さんが大半なのですが、男性の価値観の物差しで物事を測るのはちょっと違うと思いますよ。他の事でもそうです。まァ、私が女性として扱われていないだけなのは重々承知していますので別に怒りも反論の気持ちも全くありませんが、私以外の女性へ同じ様に接するとデリカシーを問われてしまう場合がありますよ、とだけ伝えておきます。

兎にも角にも私は皆平等に好きですし、皆平等に1番ではないのです。皆それぞれ誰かの推しですし、二次元だとどのキャラも皆の嫁ですからね。コンカフェ等は特に美味しい食事と楽しい空間さえあれば構わないのです。そもそも、女性に甲乙付けるなんてナンセンス、と考えておりますので。

●お知らせ●
黒飴屋です。

個人的な内容と創作活動の為の内容でブログを分けていましたが、個人的な内容の為に使用していたブログ『私の彼はクレピュスキュール』とこちらのブログを近々合併する事とし、こちらのブログの名前を前記のものに変更する事にしました。

合併先ブログ→このブログです!
新ブログ名→『私の彼はクレピュスキュール』

いつかまた個人的にサークル活動をする事がありましたら『scintillante‐シンティランテ‐』の名義で活動したいと考えています。

今後はこちらのブログでも日常的な記事も掲載する事になるかと思います。

最近はpixivやTwitterで細々と活動する事がメインになっておりますが、あくまでも趣味の範囲で自己満的に活動する事は今も昔も変わりませんのでこれからも宜しくお願いします・・・!

長々と書きましたが、少なくとも今月いっぱいは両ブログともこのままでいますよ!

黄昏マリオネット17
「先輩ー!只今戻りましたっスー!!」

勢い良くドアを開けて柿太朗がやかましく仕事から帰宅したが、リビングの椅子に座り氷とレモネードが入った丸みのあるグラス片手に携帯で電話していた銅が冷ややか視線で柿太朗を強く睨んだ。柿太朗はその視線を真に受けて恐縮した様子でそそくさと自室に入り室内着に着替え始める。

「・・・その後の水神の体調はどうだ?」
『もうすっかりげんきになって、わたしにもあってくれるようになったわ・・・あなたたちのおかげ。ありがとう・・・』

銅の電話の相手は先日行った二丁目の山の中腹にある店『おめめあります』の店主、八ツ梅だった。消えいりそうな声を久々に電話越しに聞きながら銅は淡々と相槌を打つ。

『そういえば・・・あなたたちがかえったあと、はなしにあったしろいおんなのひとがきたわ・・・。』
「・・・何?」



・・・回想するのであれば時は遡り、銅一行が下山した次の日。八ツ梅がいつもの様にカウンターの隅の席でとろとろに呆けた顔をして煙管を吸っていると、水神や猫又に呪詛を施し、柿太朗にちょっかいを掛けた白い女、世七子が『おめめあります』に入って来た。八ツ梅は焦点の合わない山羊目で世七子の方向をぼんやり見詰めた。

「なぁにかごようかしら・・・?」
「アンズメコマドリの瞳を売ってくれないかしら。」
「あらあなたは、はなしにあったしろいひとね・・・。わたしのおともだちと、このやまをくるしめたあなたには・・・おしょうばいはできないわぁ。」
「そう。それなら少し痛い目見る事になるけれど・・・よろしくて?」

世七子は背中に帯刀していた柄無し大釜を片手で抜き出して八ツ梅の鼻先から刃を突き刺した。それに対し八ツ梅は瞳孔が開ききった山羊目で焦点をブレさせながらその切っ先をぼんやり見つめていた。

「いたいのはきらいじゃないけど・・・でも、おしょうばいはできないの・・・。」
「そう。商売出来ないならこんな店必要無いわね!」

その太刀筋、まさに怒号。力いっぱい振り降ろした大鎌からは激しい水属性のかまいたち、厳密には水属性なので水蒸気を圧縮した様な湿度のある太刀筋が八ツ梅の座るカウンターテーブルを破壊する。八ツ梅のもったりとしながら驚いた様な微妙な表情の変化が衝撃の合間から見る事が出来た。

「!!」

・・・しかし、世七子が仕留めた手応えを感じる事は無かった。目の前のカウンターが店が世界が八ツ梅が、言葉の通りぐにゃりと歪み始めたのだ。異様な光景はかなり気色が悪く世七子は眉間に皺を寄せ、思わず冷や汗をかいた。八ツ梅すらドロドロに歪んで行くトリッキーな目の前の景色に内心動揺しながら世七子は大鎌を構え直す。

「ああ、いじわるは、いやよ。」

目を白黒させている世七子に八ツ梅が軽い足取りで後ろから歩み寄って抱き付く。ねっとりと囁いて息をそっと吹き掛けると世七子は崩れ落ちてフローリングに膝を付いたのだった。



『・・・あのこ、しばらくさいきふのうになっちゃったからどうぶつさんにおねがいして、やまのふもとにおいてきちゃったわ。』
「八ツ梅、貴女はそんな事も出来るのだな。」
『ええ。わたしのすうきせるのはっぱは、まぼろしをみせてくれるわたしのだいすきなどうぶつのひとみをおりまぜてつくっているものだから、とてもわたしのじゅつとあいしょうがいいのよ・・・。』
「そうか・・・。」

平仮名になってしまうほど弱々しい八ツ梅の話を解説すると、八ツ梅の吸う煙管の葉には摂取すると幻覚作用が起きる八ツ梅本人お気に入りの動物の瞳も織り混ぜてあり、それが本人の幻術とかなり相性が良く、煙管の煙を相手が吸うと八ツ梅の半端ない威力の幻術がクリティカルヒットしてしまうという事だ。

「末恐ろしいな。」
『そういえば、そのおんなのひと・・・なんかせいふくをきていたわ。がくせいさん・・・かしら?』
「制服?」
『おやくそくのあんずめこまどりのひとみをおくるときに・・・せいふくのえをそえましょうか?』
「嗚呼、それは助かる。」
『あと、たんぽぽこーひーもやくそくしてたわねぇ。』
「いや・・・」

柿太朗が『タンポポ』の正体に気づく前にしていた約束をここで知った銅。電話越しに気付かれ無い様に溜め息をこぼす。本当はあの力ない筆圧でしかペンを握れない八ツ梅のイラストもあてにならないと思うが、そこは何も情報が無いよりかはましだと考えた。ただ、タンポポコーヒーは本当にいらない。

「コーヒーは結構だ。送らないでくれ。」

良心で送ろうとしてくれているものを断るのは少々心に響くとつい思った銅はいつもより丁重に断る事にした。

あれだけ長く暑かった夏ももう終わりを告げようとしていた。ひぐらしが解夏を寂しがる様な悲鳴を町中に響かせている。
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